2002年に制定された身体障害者補助犬法(以下、補助犬法)は、今年で20年を迎えます。

制定前は補助犬を伴ってお店に入ることが出来ず、障がい者の手助けをしている犬がいることで大変な思いをすることもありました。補助犬法は補助犬がいることにより本来の目的である障がい者の自立や社会参加が促進されるように補助犬の受け入れや質の確保に関して定めた法律です。
制定に向けて深く関わった方々に制定20年目に対する想いをコメントとして頂きました。


社会福祉法人 日本介助犬協会 専務理事・一般社団法人 日本身体障害者補助犬学会 理事
高柳友子(医学博士・リハビリテーション科医師)

補助犬法成立から20年!!

2002年5月22日身体障害者補助犬法が成立した瞬間、介助犬シンシアを連れた木村さん、聴導犬美音を連れた松本さん、盲導犬ティップを連れた清水さんは、それぞれパートナーの頭をなでてこれまでの短くもハードだったロビー活動を労いました。毎日のように国会通いをしていた私は、介助犬研究班班長として支えてくれた当時奈良県立医科大学神経内科教授だった父哲也と、当時2歳と4歳だった娘と一緒に支えてくれた夫武志と一緒に反対ゼロ!の感動的な瞬間を迎えることが出来ました。法律家でもない医師である私は、木村さんが「車椅子ですら大変なのに法律がなければペット扱いの介助犬がいることで返って行けない場所が増えた」と聞いて法制化のお手伝いをするに至りました。あらゆる場面での交渉に辟易していた日々の中、法制化されてからは、同伴拒否についてある県の障害福祉課で「担当にかわります」と言われ、担当窓口があることに感動したことが思い出されます。補助犬法がある社会は、補助犬がいることを認める社会です。補助犬達は障害に拘らず人に寄り添い支えてくれます。心にバリアがありません。私たち人間も犬に見習って心にバリアなく、あらゆる多様性を受け入れられる社会を作っていきたいものです。


身体障害者補助犬を推進する議員の会会長・参議院議員
尾辻秀久 氏

補助犬議連会長として 補助犬法成立から20年に想う

2002年5月22日に成立した身体障害者補助犬法は、超党派の議員連盟 身体障害者補助犬を推進する議員の会から議員立法として提出され、全会一致を以て成立致しました。当時の会長は橋本龍太郎元総理、その後元厚生労働大臣の津島雄二会長を迎え、私は第3代の会長を拝命しております。当時、議員連盟は法案が成立すれば解散することが常でありましたが、故 橋本龍太郎初代会長の強いご意向から、法改正や今後の課題解決の継続のために議連は存続すべしとされ、細々とではありますが活動を続けて参りました。成立から3年後の法改正で、成立時に課題となっていた職場での受け入れを努力義務から義務化とし、自治体における相談窓口の設置が実現したことは議連の成果であると存じます。未だ補助犬同伴拒否が絶えず、補助犬法の認知が低いことについては、厚労省はじめ各省庁と力を出し合い解決に取り組んで参ります。成立から20年、身体障害者補助犬法を通して、社会が多様性を受け入れる温かい社会になるよう今後も尽力して参る所存であります。


公益財団法人 日本盲導犬協会 専務理事
山口義之 氏

補助犬法制定20年を迎えて

身体障害者補助犬法が制定20周年を迎えること感慨深く感じます。盲導犬は1978年の道路交通法の改正において法的に認知されましたが、そこに至るまでの先達の盲導犬ユーザーや盲導犬育成に取り組んできた方々の努力と情熱は、その記録を通じて胸に迫るものがあります。おそらく2002年の身体障害者補助犬法制定に至るまでの道のりの中で、介助犬・聴導犬の関係者の方々には盲導犬の時と同様に努力と情熱があり、その結晶としての法律制定だったのではないかと思います。一方で、いままで無かったものが社会の中で認められるようになるには、大変な道のりがあると感じます。法律で認知されることは、その第一歩でしかなかったかもしれません。補助犬というパートナーを得ることにより暮らしが大きく改善されるであろう方々が本来であればもっといらっしゃるはずですが、その存在や正確な情報は、身体障害当事者の方々に行き届いていない状況です。そして補助犬と暮らしている方々が、そのアクセス権を否定されることもしばしば起こります。補助犬の存在は、未だ十分に社会に浸透しているとは言えない状況にあると思います。私たちは努力と情熱を絶やさず、引き続き補助犬を育て理解を広める活動を続けていかなければなりません。日本介助犬協会の皆さんとは、これからも協力して活動していきたいと思います。


公益社団法人 日本聴導犬推進協会 常任理事
水越みゆき 氏

補助犬法制定20年を迎えて

補助犬法が制定されて早いもので20年が経過しました。補助犬にかかわる方や使用者の皆様にとって、当時はあらゆる面で良い方向に改善していくことが期待されていたのではないかと思います。しかし、新たに整備された法律を周知していく活動は、20年の歳月ではまだまだ足りないのだと、受け入れ拒否等の問題が発生するたびに感じています。
それでも、「聴導犬=聞こえない人のための犬」と認知していただく機会は増えており、「見えない人の盲導犬同じで、聞こえない人を助ける犬」と言われることも多くなりました。
補助犬法を通して、障がい者と補助犬が安心して暮らせる社会を作ることが私たち育成事業者の役割です。社会での受入を進めていくことで、障がい者と補助犬が社会参加するためのハードルも低くなると思っています。多様性が求められる社会で障がい者や補助犬も同様に考えてもらえるように、今後10年、20年と活動を続けていきたいと考えています。


身体障害者補助犬法とは

障がいのある方のパートナーである介助犬をはじめとする盲導犬・聴導犬、これら3種類の犬をまとめて『身体障害者補助犬』と言います。身体障害者補助犬(以下、補助犬)の同伴をスムーズに受け入れ、障がいのある方の自立と社会参加を目的として「身体障害者補助犬法」が施行されました。
この法律によって障がいのある方は、補助犬と一緒にレストランやお店・ホテルなどに入ったり、電車やバス・タクシーなどに乗ったり、職場に連れて行くことやマンション・アパートなどに一緒に住むことができるようになりました。一方では、補助犬の使用者には補助犬の同伴が周囲に迷惑とならないように責任をもって補助犬の行動を管理し、補助犬の体を清潔に保ち、健康に気を配ることが義務として明記されています。
しかし、まだこの法律について知らない方がとても多く、ペットの犬と同じように扱われ、お店や乗り物などを利用する際に補助犬の同伴を断られることがあります。一人でも多くの方がこの法律を正しく理解してもらえるよう当会でもイベント等で啓発を行っています。
身体障害者補助犬法についての詳細は「厚生労働省・身体障害者補助犬ページ」よりご確認ください。